原因はどこにある?

外航船が入港したときに酒やら煙草やらを(貨物でなく船用品として)大量に積み込むことがある。ところが税関が許可してくれない場合がある。毎回もめるのだが、これには船側にも税関側にも理由がある。
たかだか10人程度の船員で、一週間で100カートンとか煙草を吸えるはずがない。それでもなぜ積み込むかというと、中国に行った際に関係各位に賄賂として配らなくてはならないからだ。賄賂というと人聞きが悪いか。通常賄賂というのは渡す側が利益を得るために渡すのだが、船の場合はちと事情が違う。賄賂を渡さないと理不尽な損害を受けるからだ。理由もなく出港を差し止められる。大きさによって全く違うのだが、小さな貿易船でも一日待船させられると、船会社は50万円程度の損害を受ける。大型の船なら500万円ほどにもなる。これが理不尽に一ヶ月とか止められたりしたら、船会社は大損害だ。何千円分かの賄賂でそんな無用な損害を避けられるものなら、そうするのは当然の成り行きだろう。
一方、税関側にも理由がある。一週間程度の航海では船内で煙草100カートンも消費しないだろうという解釈なのだが、要は密輸防止のためなのだ。船に積む酒・煙草類は免税扱いなので、当然市場価格よりも安く買える。それを必要消費分以上に積み込むということは、どこか裏に流したりするのではないかということだ。しかし本当の本当は税関もこの流出先をさほど警戒していない。なぜなら免税で買ったものを日本国内に流すことは極めて考えにくいからだ。まず、アルコール類は近年増加したディスカウントショップとかの方が、下手すると安く買えるくらいだ。煙草とかも一船員が大々的な密輸ルートを作ってどうこうするのは難しい。せいぜい自分とその家族や友人にあげるのがいいところだ。ではなぜ税関は船用品の積み込み量を厳しく制限するのか。実は、中国からやんわりと言われているのだ。日本製の商品が国内に多く密輸されて困っているから、それを防ぐためにも厳しく取り締まってくれ、と。


あれ?なんか、密輸品が中国に多く出回っている理由に心当たりが…。


中国の下々の役人が賄賂を求め、そうしてせしめた酒・煙草を裏で横流しして、中国国内に密輸品が多く出回っているということで。結局、中国の密輸を推進しているのは中国の役人なのだ。あほくさくて何も言えん。むしろ賄賂がなくても済むものならこちらの方が歓迎だ。無駄金を使わずに済む。


ただ、こうして中国ばかり悪者にするのもどうかと思うので、一応フォローしておくと。
賄賂は中国で顕著であるが、別に中国だけではない。貧しい東南アジアの国々は多かれ少なかれこんな感じだし、韓国でも港によってはこんな感じである。さらに言うなら、中国の役人の給料が400ドルくらいのときに*1横流しした酒・煙草で月に900ドルくらい稼げるという。そんなに稼げれば、まぁ、賄賂を欲しがる気持ちも分からなくはない。給料が2000ドルくらいあれば、わざわざ危ない橋を渡って900ドル稼ごうとはしないだろうしね。

*1:物価が地方によって相当違うので、飽くまでほんの一例。