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「京都恋物語プロジェクト:まちおこし小説「ノベルなび」」


ルール:お題を見たときから40分間で小説を書き上げる。
お題 : 電池  結婚  公園

書いてみました。
惜しくもお題を見てから45分かかってしまいましたが。

題名は「環境不適合報告書」
私の愚作に興味のある人は



環境不適合報告書



「そうですか、一杯ですか…。」
「も、申し訳ございません。」
「いえ、急な申し出ですのでしかたありません。どうもありがとうございました。」
 彼は対応してくれた女性職員に丁寧にお礼を述べると、向きを変え、建物の入り口へと引き返した。
「駄目だったの…」
 彼女は彼に声をかける。彼は何も言わず、自動ドアを通り抜ける。彼女はその後を追った。
「急なことだからね。それに、もし空きがあったとしても実際に使用させてもらえたかどうか。」
 そこで彼は言葉をつぐむ。そして、ふと足を止め、目を閉じ、それから数瞬の間を置いて、再び目を開いた。
「検索してみたけれど、この近くにはもう、式場が備え付けてあるような場所はなさそうだ。」
 周囲は山と畑ばかり。道路は一車線の対面通行。空気のきれいな場所だ。晴れ渡った空だが、太陽は傾きかけている。街中まで出るには時間が足りない。
「ねぇ、近くに公園があるわよ。そこで式を挙げちゃおうよ。」
「公園で?」
「そうよ。場所なんてどこでもいい。むしろ、今まで外に出たことのない私にとっては、チャペルのある教会よりも、太陽と風の中で式を挙げる方がずっと素敵に思えるから。」
「…分かったよ。君がそう言ってくれるのなら。それに、どちらにしても僕らには時間がない。」
 二人は再び歩き始めた。そして、近くの公園へと辿り着く。人の手がほとんど入っていないのだろう。遊具は錆びてしまったブランコと鉄棒だけ。草は花壇の外にまではびこり、子供はおろか、野良犬さえ見かけない。
 それでも二人は、草を踏みしめながら、公園の中央へと歩を進めていく。そこで、不意に彼はしゃがみこむと、ゆっくりと草をつまんだ。シロツメグサだ。それを器用に数本束ね、小さな輪を作り上げる。
 二人は黙って向かい合った。彼女が手の甲をゆっくりと差し出した。彼はその手を取り、シロツメクサの指輪をそっと通す。
 再び向かい合い、二人はそっと口付けを交わし、そのまま強く抱きしめあった。
 いつまでも。いつまでも。
 不意に風が強くなり、空が暗くなった。先ほどまでの好天が嘘であったかのように、激しい雨粒が地面に叩きつけられる。
 それでもなお、二人は身じろぎもせず、口付けを交わしたままだった。



「室長、見つかりました。」
「あぁん。どこでだ。」
「それが、近くの公園に倒れていました。」
「ったく。」
 室長と呼ばれた男は、手にしていた煙草を灰皿に押し付け、ゆっくりと立ち上がった。
「来週は内部監査だったな。今日中に報告書を作成しとけよ。後で文面チェックするからよ。とりあえず、俺は本社に連絡して一回怒られてくらぁ。」
 室長は頭を掻きながら、ゆっくりと部屋を出て行った。
 残された部下はパソコンを起動し、社内ファイルの中から、不適合報告書の書式を取り出す。そして、一瞬の思考の後、キーボードを叩き始めた。

 環境不適合報告書
 題名:開発中の男性型及び女性型ビジネスロボットプロトタイプモデルの紛失に関して
 経緯:12月5日13時45分 上記ロボットの紛失が確認される。
    12月6日09時30分 記念公園内にて電池切れで倒れているところを発見。
 ………………………





この作品をUPして15分後にもう一本書き始めました。
お題を見てから、ではないけれど、
書き始めから完成まで30分強。
題名は「「婚約破棄をするには相応の理由がある」」
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