正しいカタカナ表記とは

 6-30様のブログにちらっと出ていたコメント欄の話題が個人的に気になって気になって仕方ないので、ここで好き勝手に書きます。こういうネタは大好きなのです。
 外国のものを日本語表記するときにカタカナで書き表すわけですが、どう書き表すのが正しいのでしょうか。そもそも正解不正解というものがあるのでしょうか。私の意見としては、正解に近いものというものはありますが、絶対的に正しいというものはありえないと考えております。ただ、自分なりのいくつかの基準を持ち込むことはできます。ある程度客観性があると私が考える基準をいくつか挙げ、検証してみましょう。


①多数派であること
 言葉と言うのは慣習であり、慣習の後に規則ができるものなので、多数派というのはかなり大きな基準要素になります。ただしそれは、理論を全く考えずに使っていいという意味ではありません。

②原語に発音が近い表記法
 外国語をカタカナ表記する上での原点と言える基準です。かなり重要な基準でありますが、どう表記するのが最も近いかの判断が万人に必ずしも共通しないことと、どんなに近づけても結局原語と全く同じ発音にはならないこと、などが弱点です。「ピザ」をやたらに「ピッツァ」が正しいと言い張る人がいますが、「ピッツァ」にしてもどうせ原語の発音とは異なるのです。

③文部省など国の機関が正式と認めた表記法
 かなり説得力のある基準です。しかし国の基準も年月とともに変わっていくのが世の常なので、こればかりに捕らわれると貧しい心になります。少し古い小説などでは送り仮名の振り方が違うのを見かけると思います。それは当時はその振り方が文部省的に正しかったからです。でも現在の基準とは違うわけで、しかしそれを「間違った表記法だ」と言っていたのではその小説の本質を感じられなくなります。国が定めた表記法も、あくまで基準のひとつに過ぎません。


 なお、6-30様のブログのコメント欄には、スペルを基にするという意見もありましたが、私はあまり賛成できません。例えば、ドイツ地方で「カール」という呼び方であっても、同じスペルなのにオーストリアでは「カレル」、スペインでは「カルロス」、イタリアでは「カエサル」、フランスでは「シャルル」、イギリスでは「チャールズ」、アメリカだと「シーザー」になります。このように読み方は各国でばらばらです。ならば日本式の読み方でローマ字を読もうとするならば、ヘボン式でなく日本式の読み方でないと首尾一貫しないのですが、残念ながら世間ではヘボン式の方が多数派であります。*1

 ここに挙げたのはほんの一例で、おそらくその他にも様々な基準があると思います。よって、正しいカタカナ表記であるかどうかは、「〜の基準で見るなら」という条件付でなら、ある程度まで言うことができるかと思います。では逆に、間違っていると言える表記法はあるのかと言うと、ほぼありません。なぜなら言葉は究極的には個人個人それぞれに感じ方が違うからです。作詞家や詩人や小説家などは絶えず新しい表現法を考え、試し、挑んでいるわけで、ですから今まで誰も使ったことのない表記法を使ったとしても、少なくとも間違っているとは言えないでしょう。それは、そういう職業でない人に対しても同じことです。それでも敢えて間違っているとする基準を設けるとするならば、「何のことを指しているのか他者に通じない表記の仕方」くらいではないでしょうか。しかしこの基準とても、通じる人と通じない人とがいる場合もあるので、明確な線引きはなかなか難しいと思われます。
 

*1:私のハンドルネームが「gasshu」でなく「gassyu」なのは、ローマ字表記は日本式で行うべきだという私の主張の表れです。