こんな雨の夜は

 私は生まれながらにして雨男である。例えそれが科学的にも統計学的にも証明できないとしても、私は雨男である。高校生の頃などは、家を出ようとするととにかく雨が降り始め、学校に着く頃には止むのである。自転車通学だった私に多大なる労苦となったことは間違いない。友人にこんなことを言われたこともある。
ガッシュ、お前今日8時10分に家出なかった?」
「うん、それくらいだったと思う。」
「やっぱりね。その頃雨が急に強くなったから。」
 そこへ別の友人が会話に割り込んでくる。
「え、それじゃ、学校に着いたのは8時半くらい?」
「うん、教室に入ったのがそれくらい。」
「うそ〜。雨が弱くなったのもそのくらいよ〜。」

 そんな私も歳とともに体質が変わってきたのか、大学生・社会人となって、そういうことは随分と減り、高校の頃ほどの神がかったかのような間合いで雨に打たれることは稀になった。まぁ、そこらによくいる似非雨男と同程度にしか雨に降られない。やっぱり、体質というのは変わるものなんだね。ほら、子供の頃は苦いものが嫌いでも、大人になったら結構好き、みたいな。そう。私ももう大人だ。大人には大人にふさわしいものがあるのだ。

 車を洗うと、三日以内に必ず雨が降るようになった。大人の雨男さ。