食べ物を粗末にしてはいけないのだ。

 それはつい先日のこと。
 うちのまみぃとぱぴぃ*1がそろって宝塚を見に行ってしまったので、夕食は作り置きのカレーだった。いつものように遅めの時刻に帰ってくると、仕事着のままでは落ち着かないので、まず風呂に入る。風呂から上がると冷蔵庫の中を確認。冷えたビールもある。コンロに火を点けてカレーを温める。初めは冷えて固まっているので、少しだけ牛乳を加えて水気を増やし、焦げ付きにくくする。鍋いっぱいにあるので時間がかかったが、ようやく温まった。これならジャガイモの中まで充分に温かいはずだ。カレーの香りが空腹を増長させる。待ってろよ、俺のおなか。すぐにおいしいカレーで腹いっぱいにしてやるからな。大皿としゃもじを手にし、ジャーを開けた。

………何、これ。

 ごはんよりは米に近い物体がジャーの底に溜まっている。しゃもじでかき混ぜるとあっけなくばらばらになった。

 究極の選択を迫られることとなった。ごはんのないカレーを食べるか、飢えの苦しみに耐えながら再度ごはんを炊くか。結局、ジャーの中の物体を別の皿に移し、ごはんを炊くことにした。カレーの香りに鼻腔を刺激されながら独り待つその30分のなんと長いことか。

 その日のカレーライスはいつもよりもおいしい気がした。

 あの物体はおそらく、水を吸わせただけの米を、水を入れずに炊いたものだろう。それも今となってはどうでもいいことだが…。

*1:母と父