俺の渇きを癒してくれ

 私は水分をあまり摂らない。食事のとき以外で水分補給をするのは、船で出された飲料類を飲むときくらいだ。夏でもだいたいそんなもの。私はアレルギー性鼻炎で年中鼻づまりなので口で息をする。人より喉が渇きそうなものだが…。
 しかしそんな私でも、水分を全く欲しないわけではない。暖房の効いた部屋にいる夜の方が意外に喉が渇くのだ。もしかしたら、一日に必要な水分量を体が自動的に求めて、寝る前に調整を行っているのかもしれない。部屋を抜け出し、台所へと向かう。今のご時勢、冷蔵庫の中にはペットボトルや缶ジュースの二三本くらいあるのが普通の家庭というものだ。私は冷蔵庫を開けた。
 「缶ビール」
 いや、これはさすがにまずいだろ。夕食のときに晩酌しちゃってるし、そもそも、ちょっと喉が渇いたってくらいでその度に缶ビール空けるわけにもいくまい…。
 「豆乳」
 しかも成分無調整ではないか。先日「豆乳なべ」をしたときの残りだな。
 「青汁」
 ………。
 仕方ない。牛乳で我慢するか。…あれ、牛乳がない。そういえば今朝、コップに注がれていた牛乳が微妙に少なかった気が…。あれで最後だったのか?しかも買い足されていないのか?他に冷蔵庫内にあるのは…、「ヨーグルト(固形)」か。微妙だな。目いっぱいかき混ぜれば飲み物っぽくなりそうな気もするが。
 こうなれば、最後の切り札。「水」だ。しかし水道水ではない。山奥で汲まれた天然のミネラルウォーターだ。ほら、台所の隅に何本ものペットボトルが並んで…、倒れてる。軽い。全部…。

 「頼むぜ、まみぃ。」*1

 お茶を淹れろだと?私にとって飲み物とは「冷たいもの*2」なのだ。贅沢を言っているのではない。一般家庭なら、普通はお茶だのポカリだの、何かしらのペットボトルが冷蔵庫に入っているものじゃないのか。どうして「ビール」の次が「豆乳」と「青汁」なんだ。「青汁」なんて誰が飲んでいるんだ。私は飲んだ記憶がないぞ。

 いいさ、いいさ。日干しになって死んでやるぅ。

*1:ムンク「叫び」ふうに

*2:酒類を除く