不景気過剰反応症候群

旧正月も)明けましておめでとうございます。

 今年の流行語大賞は早くもこれで決まりなのではないかと思えるくらい、「不景気」という言葉ばかり耳にする。それを最も感じさせるのが、派遣社員の解雇の話題ではないだろうか。なるほど、確かに多くの人が職を失っているのだろう。しかしながら私が思うところ、今の不景気は「普通の」不景気であって、決して「100年に一度の」不景気ではない。
 そもそも、なぜこんなにも派遣社員が世の中に多くいたのだろうか。私が大学を卒業したばかりの頃からの数年間、やたらと派遣社員になりたがる若者が多くいた。政府が派遣業に関する規制を緩くしたこともあって、派遣社員になることは流行であったように思える。私の周囲にも派遣という流行に流された者は多かった。曰く、職種や人間関係が気に入らなければ辞めて、また新たな派遣先を紹介してもらえる。曰く、思い責任を負わずに済む。曰く、お金が溜まったら辞めて、またお金が必要になったら働けばいい。良く言えば、一つのことに捕らわれずスマートな人生設計であるが、要は浅はかな根性なしである。実際まともな若者は、色々な会社に派遣されながらも、自らに適した仕事を見つけると、いつの間にかちゃっかりと正社員になって居座っていたりする。で、残された軽薄にーちゃんねーちゃんたちの多くが職を失ったわけであるが、考えてみれば当たり前のことである。
 しかし考えが浅はかであったとしても、現在失業して苦しんでいるのを放っておくわけにはいかない、と思う人もいるかもしれない。しかし彼らのほとんどは困ってはいないのである。なぜか。その世代の若者であれば、大抵はまだ両親が健在である。そこで彼らは実家に帰り、時々携帯電話で派遣元会社に電話をして次の派遣先が見つからないかどうかを尋ねるだけで、その実はニート生活を謳歌しているに過ぎない。そうでないとしても、直ちに職を見つけて収入を得ないと食うところにも寝るところにも困るという状況では決して無い。何か資格をとるための勉強でもぬくぬくとしていれば、親も本人も不景気の犠牲者だというスタイルを保つことが出来る*1
 もちろん、だからと言って失業対策をしなくてよいと言っているわけではない。実際に寝るところも食べるものもなく、困っている人も多い。ただ私が言いたいのは、決して「100年に一度の」不景気ではないということだ。「失業者数」は過去に例を見ないほど多いのかもしれないが、「失業して困っている人の数」で考えるなら、恐らく通常の不況と同じ程度だろうと思っているのだ。


 マスコミはバカだから騒ぎすぎ。それが却って不況に拍車をかけているのに。


 世の中には人手不足の業種など山ほどある。本当に仕事がなくて困っているなら、是非そういう業種に就業してほしい。ワーキングシェアなどしなくとも、五体満足ならば働き先はいくらでもある。個人的には船乗りになってほしい*2

*1:本来、社会に出てからとる資格や免許というものは、仕事の合間を縫って、わずかな睡眠時間を削りながら勉強してようやく得られるものだ。派遣元に電話をかけるだけで就職活動している気分になって勉強時間に専念できるものは、勉強することを否定するわけでは決してないが、少なくとも学生気分の勉強姿勢であって、社会人の勉強姿勢とは意気込みが全く異なる。

*2:漁船でなく、タンカーな。