本音と建前

 塾講師様のブログにも少しコメントさせていただいたのだが、近頃の状況を見て景気が上向いていると考える人々の気が知れない、と私は思っているのだ。一部大企業の経常利益が黒字になっているとはいえ、その多くは人員削減などで人件費を削ったことによる利益で、必ずしもモノがばんばん売れているというわけではない。株価が上昇していることに関してはさらに馬鹿げているとしか言いようがない。本来の企業価値以上に株価が値上がりしている状態がバブルであり、そのバブルが弾けたときにどのようになったのかまだ記憶に新しいはずだ。企業価値の上昇に伴って株価が騰がるのは好景気だが、本来の価値以上に騰がったものは単なるマネーゲーム*1の結果であり、それをみて景気が良いだの悪いだのと捉えるのは茶番である。
 では好景気とはどういう状態か。一般的にはお金が活発に動いている状態が好景気だと思われる。なぜなら金は金であるうちはただの数字であって、商品(サービスを含む。以下同様。)と交換することによって価値が生じる。金そのものは食えもしないし着ることもできない*2からだ。つまり国民皆が金を使わずに貯めていては誰も商品の恩恵にあずかることができない。逆に毎月100万円入ってきて100万円使うならば、毎月100万円分の商品の恩恵を国民全員が受け取れるということになる。毎月200万円なら、200万円分の恩恵だ。
 さてここで初めに戻ってみる。企業が人減らしをすると、国内でお金が活発に動くようになるか。否。失業者は収入がなくなるので支出も抑えざるを得ない。結果的にお金の動きが止まる。もちろん首を切られずに企業に残れた人は以前よりも多くの賃金を手にすることができるかもしれないが、労働時間が倍になったからと言っても賃金は二倍にはならない。仮に二倍になっても消費も二倍になりはしないだろう。また、株価のバブル的上昇によりお金が活発に動くようになるか。否。一般的には株で儲かった金は再び株に回される。結局世の中に出回ることはない*3

 
 さて。私は塾講師様のブログのコメント欄に『私の感覚では、大幅な人員削減とかバブルのような株価上昇を捉えて「景気が良くなった」と考える経済学者や政治家の考えが理解できません。』と書いた。しかし、本当はもう一つ付け加えたいことがあったのだ。それは、『しかし、「景気が良くなった」と口にする経済学者や政治家の考えは理解できます。』というコメントである。好景気とはお金が動いている状態であることは前述した。もし政治家が「今なお日本は不景気のどん底です」と答弁したらどうなるだろう。国民の多くはさらに消費を抑えようとして、ますますお金が動かなくなる。だから政治家は「景気はどんどん上向いております」と言わねばならないと思う。例え本音では「まだまだ不況は続くなぁ」と思っていても、「景気に回復の兆しが見られます」と胸を張って言わねばならないと思う。結局のところ景気は国民全体の思い込みによるところが大きく、景気がいいと思って皆が足並み揃えてお金を使えば、本当にお金が回りだして好景気になるのだから*4



 私も日本が早く好景気になることを願っている。だからこのブログを読んだ皆さんは、ここまでの私の発言の全てを忘れ、これから言うことだけを信じていただきたい。



日本はもう、未曾有の好景気に突入しました!! 買いたいと思ったものはどんどん買うようにいたしましょう。心配しなくても、景気が良くなるので給料もここ数年のうちに二倍三倍と跳ね上がりますから。

*1:決してマネーゲームを否定するわけではない。私も株はやってる。ただしバブルのような株価上昇は景気とは本来関係のないものであり、同時に、ギャンブルであって経済活動ではないというのが私見だ。

*2:銭形平次が有効利用しているくらいだが、あれも本来の金の使い方でなく、他のもので代替できる。

*3:パチンコで儲けた金がいずれ別の機会のパチンコで消費されてしまい、手元には何の商品も残らないのと同じである。

*4:例えば、経営が健全な銀行でも、潰れそうだと噂が立って預金者全員がお金を下ろしにきたら、本当に倒産してしまう。