飲酒運転をどう裁くか。

最近飲酒運転が巷で問題になっている。もっと厳しくするべきだとかいう意見も多く出ているようで、私も基本的には厳しくすることに賛成だ。しかしながら、厳しくするというのは本当はとても難しいことなのだ。そもそも具体的に何をどう厳しくするのか考えなくてはならない。
まずアルコール量の基準値だが、これは現状でも相当に低い。どのくらい低いかと言うと、夜12時過ぎくらいに焼酎やウィスキーを飲んでいたら翌朝の6時とか7時に通勤のために車を運転したら酒気帯び運転で捕まる、くらいの低さだ。これ以上基準を下げたなら、車通勤の人はほとんど晩酌ができなくなってしまう。下手すると、酒を飲んでいなくても酒気帯び運転で捕まる恐れもある。お菓子類やノンアルコールビールにも微量のアルコールが含まれている。大量のアルコールの近くで働いている人などは、皮膚から吸収されるアルコールだけでも基準値を超えるかもしれない。そもそも飲酒運転・酒気帯び運転が罪になるのは、判断力が低下して危険だからという理由であって、アルコールそのものが危険なわけではない。判断力の低下を測定する術がないから、アルコールを槍玉に挙げているだけだ。あまりに過剰に基準値を下げると弊害が出る。
次に罪を重くすることだが、ただこれも、厳しくすればいいというものではない。実際、ひき逃げが最近増えているらしい。飲酒運転で人を撥ねる方がひき逃げよりも罪が重いからだ。では、ひき逃げの罪も重くすればいいのかというと、そうでもない。今度は他の傷害罪や殺人罪よりもひき逃げだけが著しく重くなっては、やはりバランスが悪い。仮にそれらの罪もバランスよく重くしても、やはりひき逃げの増加は避けられない。極端な話をすれば、飲酒運転で人を撥ねたら無期懲役でひき逃げなら死刑だとした場合、仮にひき逃げの方が重罪であっても、一か八か捕まらない方に賭けて逃げ出すものは後を絶たないことは簡単に予測される。
それならば、最も現実的な対応はどうすることか。それは、検問などの取調べ箇所や回数を増やすことである。現状の基準値でも、現状の罰則でも、運転していると3回に1回くらいは検問に引っかかるというのであれば、ほとんどの人は飲酒運転を避けるだろう。ただ、これにも問題が一つある。それは警察の動因能力を増加させるということは、それだけ人件費がかかるということである。つまりは税金を投入しなくてはならないということである。逮捕者が多いうちは、彼らからの罰金で補えるかもしれないが、飲酒運転が撲滅されればその罰金という財源はなくなり、膨れ上がった人件費に大量の税金を投入しなくてはならない。消費税は20%だな、こりゃ。



余談だが、泥酔状態で人を殴って殺した場合、加害者側に判断能力が充分でなかったとして罪が軽くなることがあるというが、全く馬鹿げている。そんなことを言うならば、泥酔状態で運転して人を撥ねた殺した場合でも同じことになるのではないか? 代行タクシーを呼んで帰るつもりだったので酒を飲んでいたが、泥酔してしまい、運転してはいけないという判断能力が低下して運転してしまった、ということも言えると思うのだが…、どうだろう?